【1】従業員承継を難しくする3つの課題

事業承継、誰に自社の未来を託すか

「事業承継」とは、具体的に企業の何を引き継ぐことだと思いますか?社長の権限?従業員の雇用責任?経営理念?取引先との人脈?銀行などステークホルダーとの関係?会社の株式?企業経営に関わったことがある方は、いろいろな事を思い浮かべたことでしょう。今ここであげたものは、全て承継する対象です。事業承継は、現経営者が何を引き継ぐかを整理することから始まります。そして、整理したひとつひとつの事柄について、今まで経営者としてどう判断し、どう関わってきたか、どういう想いで取り組んできたか、経営者の想いを引き継いでもらえるよう後継者の方に丁寧に伝えていくことが、事業承継においては肝要です。

しかし、日本の中小企業における事業承継の現状は、そもそも想いを伝える相手である後継者が見つからないという大きな問題に直面しています。中小企業庁が2019年12月に出した「第三者承継支援総合パッケージ」によれば、2025年までに70歳以上となる経営者245万人のうち、約半分の127万人が後継者未定と推計されています。そのような中で昨今注目されているのが「内部昇格」と言われる、従業員に承継する手法です。
長年一緒に働いてきた従業員であれば、経営者がどのような想いで会社を支えてきたか、事業内容、取引先との関係、社内の状況もある定程度理解しているはずです。もしその方が多くの従業員から既に信頼を勝ち取っているようであれば、後継者を一から教育するよりスムーズでしょう。事実、事業を承継した経営者の就任経緯の調査(出典:2021年版中小企業白書 第2部「危機を乗り越える力」第3章「事業承継を通じた企業の成長・発展とM&Aによる経営資源の有効活用」)によれば、内部昇格は近年に増加傾向にあり、2020年時点では34.1%に達し、同族承継34.2%と同程度の選択肢となっています。

近年事業継承をした経営者の就任経緯

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内部昇格で解消するべき3つの問題

現経営者が「後継者候補として良いのでは?」と思う従業員がいても、その従業員が意を決してくれるとは限りません。内部昇格の実現に大きく立ちはだかる問題があります。それは、1)株式買取り資金の問題、2)個人保証の問題、3)代表権の委譲、の3つです。

1)株式買取り資金の問題
未上場企業が円滑に会社経営をするには、経営者が一定以上の株式を保有していることがとても重要です。株式とは会社の所有権の単位であり、会社法で定める会社の重要事項は、その株式を持つ株主が議決権を行使する株主総会で決議されるのです。つまり、後継者が社長に就任したとしても、一定以上の株式を持ち経営権を確保しなければ、会社法で定める会社の重要事項、例えば、会社の役員人事や事業売却、解散などは、他の株主に賛成してもらえるよう説得する時間と労力が必要になります。
そうならないよう、親族内承継であれば、現経営者の代から後継者に株式を相続させるための様々な対策を検討し準備ができます。しかし、内部昇格の場合はそうではありません。社長業に関心を持ってくれる従業員が現れても、具体的な協議になった段階ではじめて、スムーズな経営の意思決定のために株式を買い取る必要性を知り、その買取りに必要な資金がどれだけの金額か、そしてその金額を従業員自らが用意しなければならない事を知るのです。その時に、問題無く私財を用意できる人はそうそういないでしょう。ある程度の貯蓄があったとしても、その従業員にご家庭があれば、なおさら家族の将来のためにもお金を残しておく必要もあります。また、幸運にも金融機関が買取り資金を融資してくれるという話があっても、家族のことを考えると、なかなか多額の借金を背負う決断はできないものです。家族から賛同を得られないということもあります。株式の買取り資金が問題で後継者となることを断念する人も少なくありません。

2)個人保証の問題
多くの企業は金融機関から融資を受けていますが、その際に経営者が連帯保証人になっているのが一般的です。これは、中小企業の財務基盤・経営基盤の脆弱性、財務諸表の信用の低さから、経営者の個人資産で補完しようという考えによるものです。事業承継を行う場合、経営者による連帯保証は基本的には後継者に引き継がれます。親族内承継であれば、親の財産を子が引き継ぐことが想定されますので、金融機関側としても連帯保証人の切り替えに応じやすいでしょう。しかし、内部昇格などの親族外承継の場合はそうはいきません。
まず、後継者自身が連帯保証を引き継ぐことを躊躇するでしょう。これはとても自然なことです。借入の金額が大きいほど、連帯保証を背負う覚悟は、早々できるものではありません。これまで会社員だった後継者が、経営者となる覚悟を決める一大イベントといっても過言ではないでしょう。
また金融機関からしても、連帯保証人の切り替えは簡単に応じられるものではありません。おそらく多くの後継者の方は、これまで従業員として得てきた給与が収入の柱であり、連帯保証人として足る十分な資産を有していることは少ないでしょう。仮に後継者が個人保証を背負う覚悟をしたとしても、金融機関が応じるかどうかはその後継者の信用力によるところが大きいのです。この問題を解決するため、事業承継時の個人保証の解除を後押しするべく、2013年12月「経営保証に関するガイドライン」が制定され、さらには経営者と後継者双方からの二重徴収を行わないことなどが盛り込まれた経営者保証ガイドラインの「特則」も取りまとめられ、2019年12月に公表されましたが、実際の事業承継の現場への浸透は、まだまだ時間がかかるでしょう。

3)代表権の委譲
代表取締役は社外に対し会社を代表する最高責任者であり、その役割や責任は会社法や会社定款により明確にされています。金融機関や営業上の取引先との様々な契約においても、代表取締役の名のもとに取り交わすものです。したがって、代表権の委譲は対外的な最終責任者の交代であり、後継者の独り立ちを意味するのです。後継者に代表権をどのタイミングで委譲するかは、現経営者にとっても後継者にとっても、重大な決断なのです。
しかし、世の中には「社長」と呼ばれていても、代表権のない社長もいます。事業承継の過程でも「代表権をつけるのは少し経験を積んでから」と、ひとまず代表権のない社長に就任する事例があります。また、会社側の意思では無く、金融機関側が、先に述べた金融取引に伴う連帯保証の兼ね合いで、現経営者から代表権が外れることを渋るために、後継者に代表者を委譲できない場合もあります。
後継者が社長に就任しても代表権がないままでは、最終決定権は代表権がある現経営者であり、今までと大きく違いません。後継者教育においては、代表権を伴って経営判断を重ねる経験がとても重要です。なぜなら、経営者としての成長は、自らの頭で考え、実行した事の成功と失敗体験の積み重ねによって形成されていくからです。

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【2】成功事例(“想い”を持つ従業員への承継)

これまでに説明した3つの問題を解決し、円滑な従業員承継を後押しするために、FVCでは、地域金融機関と事業承継ファンドを組成し活用を推進しています。その具体例をご紹介しながら、活用方法ついて、順を追って説明していきましょう。FVCが大阪信用金庫及び大阪信用保証協会と共に設立した「おおさか事業承継・創業支援ファンド」(以下「おおさかファンド」)を活用し、想いのある従業員への事業承継を成功させた、東大阪発のものづくり企業、表面処理・コーティング事業を展開する株式会社ユニックスをご紹介します。

リーマンショック・火災を乗り越え、独自ブランドを確立した東大阪発のものづくり企業『ユニックス』

■会社概要
株式会社ユニックス
大阪府東大阪市
経営理念
社是「和・誠実・挑戦心」、社訓「顧客満足から始まる社員満足」
事業概要
表面処理加工業。独自のポリウレタンコーディング「ユニレタンシリーズ」により、各種フッ素加工コーティング、樹脂コーティング、メッキ、熱処理、窒化処理等様々な表面処理に対応
1988年4月
事業規模
年商2億円程度
従業員数
11名(2020年7月時点)
URL
http://www.unics-co.jp/
■主な登場人物
  • 苗村氏・・・ユニックス創業者、現・代表取締役会長
  • 町田氏・・・ユニックス後継者、現・代表取締役社長
  • 朋子氏・・・苗村氏ご息女、現・取締役、税理士資格保有者
■事業承継に向けた主なアクション
年月 事業承継に向けた主なアクション 苗村氏ご年齢 町田氏ご年齢
1988年4月 苗村氏がユニックス設立。 45歳 13歳
2010年3月 工場火災により社屋全焼。 67歳 35歳
2011年5月 町田氏がユニックス入社。 68歳 36歳
2013年頃 朋子氏が後継者にならない旨を父である苗村氏に明言。後継者検討のため社員に対しアンケート実施。次期社長候補として町田氏が全社員から支持を得る。町田氏を後継者とする事業承継案が加速。 70歳 38歳
2015年5月 町田氏が常務取締役就任。 72歳 40歳
2017年5月 町田氏が取締役社長就任(代表権委譲は留保)、一部株式を取得。同時に苗村氏は代表取締役会長に就任。 74歳 42歳
2020年5月 大阪信用金庫からユニックスにおおさかファンドの活用を提案、FVC担当者を含めた面談を実施。 77歳 45歳
2020年7月 事業承継ファンド活用により、町田氏が議決権ベースで経営権確保、経営と所有の一致を果たす。 77歳 46歳
2020年10月 町田氏が代表取締役社長に就任、苗村氏と2名代表の体制に移行。(現) 78歳 46歳

創業者である苗村昭夫氏(以下「苗村会長」)は、「エジソンの様な発明者になりたい」と夢を追い大手家電メーカーから1975年に独立。家電製品の製造や貿易などを変遷し、1984年より現在の表面塗装処理会社を経営しています。発明者を目指した苗村会長の会社らしく技術開発力が高く、自社独自の表面加工技術、高機能・高耐摩耗ポリウレタンコーティング技術を、国内だけでなく、海外へも提供しています。その技術は高く評価され、2020年に第37回優秀経営者顕彰 日刊工業新聞社賞を受賞、大阪府より新技術・新製品研究開発功労賞を受賞しています。

しかし、ユニックスの35年超の歴史は、決して平坦なものではありません。大手家電メーカーの下請け製造としてスタートするも、技術者として「いいものをつくりたい」という想いが先行し、販売面で失敗し大きな損失を出してしまいます。経営とはなにかを深く考え、そこから塗装業に事業を絞ることになりました。その後は順調に成長、従業員数も25名まで増えた頃にリーマンショックがおこります。その影響により、売上は半減。さらに、その後、本社工場が火事になり、再建に必要な火災保険が支払われないという事態に見舞われ、保険会社との5年に及ぶ法廷闘争がはじまりました。最終的に高裁で和解となりましたが、火災からの再建の5年間は、非常に大変な道のりでした。その大変な道のりを共に闘ってくれたのは、苗村会長の娘さんで現在社外取締役の朋子さんでした。

朋子さんはユニックスで経理の仕事をしていた時期もありましたが、一旦は、税理士として別の道に進んでいました。しかし、リーマンショック後のある日、久しぶりに会社へ顔を出すと、元気のない従業員の顔がありました。その時、「自分にできることはないのか?」と考え、ユニックスへの関わりを再開されました。

そんな朋子さんは、火災が起こった日のことをこのように語っています。「火災があった日の夕方、父は『明日からコーティングするぞ!』と宣言して、翌日本当にやってのけたんです。さらに、当時は資金繰りも厳しく、外注する余裕もなかったので、自社加工で仕事を受けることしかできなくなってしまいました。しかし、それが功を奏し、技術力が上がり利益率が上がり、手形を振り出すような必要もなくなりました。その変化を目の当たりにして、『ユニックスはまだまだいける!』と、思いました。」

当時、火災保険の支払いに関し保険会社と係争中であった中、朋子さん自身も多額(3,600万円)の借入金の保証人にもなり、再建に力を尽くしました。「ユニックスで頑張る社員が、人生をやり通すくらいの間は、会社が存続させなければ!と、闘争心で突き進みました。ユニックスの復活への確信めいた思いが原動力になりました。」と語ります。苗村会長が望んでいた、朋子さんが後継者になることには応えられなかったものの、経営者の父を税理士として応援する娘の存在も、ユニックスの大きな力となっているのです。

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70歳を前に事業承継について考えるように。社長へのステップとなる“作戦”を決行

2015年当時のことを「火災保険の5年にわたる裁判が終わり、自分も気づけば70歳を超える年齢。そろそろ、事業承継について考えるようになった」と苗村会長は振り返ります。やはり、火災からの再建でも一緒に踏ん張ってくれた娘の朋子さんに継いで欲しいという想いはあるが、朋子さんは税理士として独立しており、その想いは叶わない。一方で、2010年に入社した営業の町田氏の、仕事に真摯に取り組み、同僚から信頼を得て活躍をしていく姿に、苗村会長の心が動いていきました。
朋子さんも「父が町田氏を後継者候補として気に入っていることは感じていました。そこで、『私は後継者にならない。』とはっきりと父に伝え、そのうえで、『町田氏に後継者となってもらえるような環境を整えるのが経営者としての大切な仕事でしょ』と伝えました」と、事業承継への歩みを進めるように進言しました。

町田氏は営業として10年前に入社しました。町田氏は「社長になる、なんてことは考えたこともなく、目の前のことを精一杯やるだけという気持ちでやってきました」と語ります。しかし、苗村会長が町田氏に会社の将来について語ることが増えていき、さらに、役職が上がり経営に準ずる立場になっていくにつれて、「自分が後継者になる可能性があるかもしれない」と思うようになったと言います。

そんな中、苗村会長の”作戦”が決行されました。それは「次期社長は誰がいいか?」を従業員に問うアンケートです。その結果、町田氏以外の全員が町田氏を次期社長に選んだのです。そこで、苗村会長は町田氏に「これだけのみんなの想いに応えないといけないのでは?」と問いかけました。まさに、これが社長へのステップとして苗村会長が用意した作戦だったのです。後継者に求めるものとして、従業員から信頼される、そして、従業員を信頼することが一番大事と語る苗村会長らしい作戦と言えます。町田氏は当時の想いを、「自分には・・・」という気持ちから、「誰かが後継者にならないと・・・」という考えに変わっていったと言います。

そして2017年、いよいよ苗村会長から町田氏への事業承継がスタートすることになります。いきなり代表権を渡すのではなく、町田氏が取締役社長に就任し、苗村会長が補佐しながら「社長業とは何か」を掴むことから始まりました。まずは経営者として必要な知識を広く身に付けるべく中小企業大学校で修学しながら、その学びを実践で活かし、さらに苗村会長の経験を町田氏に具体的に伝えていくことで、町田氏の中で「社長業とはどういうものか」を反芻していく。このようにしながら重要な実践での学びを重ねていきました。実践での学びとは、経営者として動いて悩むことでしか得ることはできません。そんな学びを3年程続けてきた町田氏に「会社のため、社員のため、自分のため」という考えが身に付いてきたと感じた苗村会長は「代表権を本格的に譲ろう」と考えはじめました。

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気がかりな『後継者の経営権の確保』を事業承継支援ファンドで解決

いざ代表権を譲ろうと考えると、次に課題として浮上するのは「経営と所有の一致」、つまり、「後継者の経営権の確保」です。それをどう進めるか考えていたところ、大阪信用金庫からファンド活用の提案を受けることになりました。

大阪信用金庫はユニックスのメインバンクであり、苗村会長と大阪信用金庫とは30年以上のお付き合い。苗村会長は「家電メーカーから現在の表面塗装処理会社に事業転換する際、八尾から東大阪に移転しまして、その時、資金面で助けてもらったのが当時の支店長で、現在は大阪信用金庫の役員であるAさんなんです。そのAさんには、火災の後も色々お世話になりました。」と語ります。それほど強い信頼関係で繋がる大阪信用金庫のAさんからファンドの活用を提案されたということで、前向きな気持ちで話を聞いたと語ります。

ファンドに関する提案は、大阪信用金庫の本店の会議室で行われました。ユニックスからは、苗村会長と朋子さん、そして町田社長の3名、大阪信用金庫からはA専務理事と、地域産業振興部の執行役員と担当調査役の3名、そしてFVCからは投資担当者の尾川が参加しました。その会議で、FVC投資担当者である尾川が感じていた、ユニックスの事業承継のポイントは2つでした。1つは、後継者である町田社長の資金的な負担を軽減しながら、経営権の確保(経営と所有の一致)をどう進めるか、2つめは、譲る側の想いをどう適切に引き継いでもらうかです。この2つのポイントを抑えた、譲る側、引き継ぐ側、両者にとって納得がいく提案を検討することにしました。

大阪信用金庫本店での会議に参加した苗村会長は、ファンドの説明を聞くまでは、「ファンドというと、一般的には大きな利益を追求されるという印象がありました。しかし、実際はそうではなかった。また、株式の承継において、町田社長に対し非常に心苦しい想いもあった、町田社長の資金的な負担が軽減されることがわかり、納得がいった」と言います。
朋子さんは、税理士という職業柄、周囲に事業承継支援に携わった経験を持つ知人がいたようで、ご意見を伺ったそうです。「『ファンドを受け入れたら意に反した意思決定をされるのではないか?』と心配されました。」とのこと。ファンドという一般的には馴染みがない言葉の印象からか、不安を覚える方が多いのでしょう。しかし、ファンドと言っても、出資する人たちの属性、ファンドの組成目的で運用方針は異なるもので、ひとくくりにできるものではありません。FVCは地方創生を後押しするため、地域活性化に資する企業の継続と成長を目的に投資する方針を掲げていることや、投資手法や関わり方を投資担当者の尾川から説明を受けて、ご理解いただけたようです。
町田社長も、「一般的な『ファンド』のイメージはあまりよいものではなかったが、お世話になっている金融機関がしっかりと後押ししており、さらに、後継者としては株式を取得する際の資金面で非常にメリットがあると感じ安心できた」と語りました。
いざ「社長になろう!」と決断した後継者からすると、株式買取のために個人で銀行融資を背負うのはとてもとても大きな負担であり、その負担を背負いきれず後継者になることを断念する人も少なくありません。FVCの地方創生ファンドの活用により、後継者としての一歩を踏み出すことが可能となるのです。
ユニックスのみなさんがファンドの姿勢や投資手法についてご理解いただけたおかげで、この面談から1か月程度で投資受け入れが決定しました。

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『代表権の譲り方』、事業承継ファンドからの助言で2名代表制に

ところで、町田社長は2017年の社長就任時には代表権を付与されていません。苗村会長には、社長就任して間もないということで、「実戦で社長経験を積んでから代表権を付けよう」という考えももちろんありましたが、もうひとつ、代表権の委譲が進まない理由がありました。それは、冒頭お話しした金融機関との融資取引に伴う経営者の連帯保証です。
ユニックスはこれまで複数の金融機関から資金支援を受けており、苗村会長が連帯保証人となっています。金融機関からすれば、連帯保証をしている当事者が代表者ではなくなることは、許容し難いことです。事業承継の現場においては、金融機関にも納得していただける代表権の委譲が重要です。
ユニックス苗村会長から同社の金融取引と連帯保証についてご相談を受け、FVCから苗村会長と町田社長の2名代表制を提案しました。金融機関の継続支援においては苗村会長に引き続き代表権を有していただいたほうが良い一方で、後継者教育の観点では町田氏に代表権を付与し経験を積んでいただいたほうが良いと判断したからです。そうすることで、苗村会長が町田社長を補佐しながら後継者教育も可能となります。そして、5年後を目途に、町田氏が代表取締役社長として独り立ちすることを目標としてはどうかと提案したのです。
金融機関にも2名代表制は受け入れていただくことができ、2020年10月、町田社長に代表権が付与されました。連帯保証については、既存の融資については引き続き苗村会長が連帯保証となり、新規の融資については町田社長が金融機関の求めに応じて検討されることになりました。

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やっと一区切り。想いのバトンを引き継ぎ、自分らしい新体制づくりに挑む

事業承継における重大イベントである株式の承継に続き、代表権の付与が果たされ、本格的な町田代表取締役社長による新体制のユニックスが2020年10月にスタートしました。
町田社長は、「コロナ禍の影響もあり不安が無いとはいえない」と言います。しかし、ユニックスの強みについて問いかけると、「表面加工業としてニッチな立ち位置で、町工場でありながらも業界シェアは高い。さらに、研究開発力もあり新製品も作り出せるし、自社ブランドもある。色々な業界へ販売を広げていけるのではないか」と、営業畑の新社長らしいコメントには不安の陰りも感じられません。
苗村会長は、そんな町田社長を見て「社長になる前の町田さんと今の町田さんは全くの別人」だと喜んでいます。「取締役であった時には、部門の責任者として意見を主張することも必要であったものの、社長になってからはそれぞれの立場の声に耳を傾け、話し合う姿勢が強くなった。経営計画の策定や結果分析においても、幹部と向き合い、必要なところは自分の至らなさを認め、経営者としての責任意識が高まった」とのことです。今後の幹部候補の育成にも期待を寄せています。
朋子さんは、町田氏が代表取締役社長になられた後、苗村会長と3人で話された際に、町田社長がユニックスの将来ビジョンを熱っぽく語る姿がとても印象的だったようです。「事業承継の形式的な手続きがひと区切りついたとはいえ、会社はまだまだこれからも続いていくし、発展をさせていかなければならない。そのことをしっかりと受け止め、前を向いて進んでいる」と安堵されたそうです。

苗村会長は、町田社長に、経営者としての行動や言葉、会社のカラーなどを伝える文章をしたため渡しました。「まずは、会社の“幹”の部分をしっかり引き継いで守ってもらい、その後は自分でその幹から“枝葉”を広げてもらいたい」という想いから、文章としてしっかり残したようです。その文章の重みを受け、町田社長も「苗村会長がやってきたこと、さらに、自分が新たにやっていくこと、2つの方向性を手探りで進めていく」と語っていました。

社長として立ち振る舞い、日々成長し変化をし続けている町田社長に対し、上司・同僚として町田氏と付き合ってきた従業員の皆さんは、その変化に時に戸惑いを感じる場面もあるようです。苗村会長は、そんな空気を掴み取っては、お互いの立場を理解できるよう調整役を担ったり、新製品の開発について町田社長に相談したり、新社長を立てつつサポートする立場でいます。また、先輩経営者から「後継者とは家族づきあいをしなさい」と教えられたそうです。社長の悩みは社長経験者にしかわからない。壁にぶつかった時に、悩みや苦しみを打ち明けられる存在であるようにとのことなのでしょう。この教えの実践には苗村会長の奥様も理解し協力してくれているといいます。

公私ともに苗村会長のサポートを受けつつ、後継者として活躍されている町田社長。苗村会長について尋ねると「実父と同世代ということもあって話しやすく、オヤジのような存在です。義理人情に厚く“いい人”なんですよ。」と笑顔で答えてくれました。創業者から後継者への想いのバトンが、互いを想いやりながら、暖かく引き継がれていることを感じます。
朋子さんは、そんな2人を見守りながら、父である苗村会長には「がんばることが生きがいの人ですが、会長職になったので、もっとそれを楽しんで感謝して、人に頼ってほしい」といいます。町田社長には「多くの人に会って、話を聞いて、世界を広げてほしいです。そして、社長としての器を大きくすることで会社も大きくしてほしい」と語り、とてもよい距離感で2人を見守っていることがわかります。

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事業承継は夢を諦めずに!

最後に、苗村会長と朋子さんに、自社と同じく事業承継に悩む企業の方々にメッセージをいただきました。

苗村会長は「私どものような中小企業は、夢をもって起業した人ばかりだと思います。その夢を成就させるためには、最後は事業承継だと思います。自分もまだ志半ばではあるものの、自分の想いを成就できそうです。その手段がこのファンドでした。しかし、方法はなんでもいいのです。自分の意志を伝え、わかってもらえる方に継いでもらえればいいのです。そして、新しい社長に成功させてもらえば、なお嬉しいことです」と、夢をもって起業した想いの成就について語ってくれました。

朋子さんは、「問題や課題には必ず解決する方法があると思います。だから、志をもって諦めずに解決していってほしい」と、苗村会長という父の背中をみてきた方らしいメッセージでした。

従業員への事業承継、いわゆる内部昇格は、国の支援も親族承継に比してまだまだ十分とは言えず、後継者の資金的な負担が大きく、諦めてしまうケースも少なくありません。FVCでは、「事業は想いがある人が引き継ぐべき」と考えています。想いをもった創業者が営む事業であるからこそ価値があり、その想いを引き継いでくれる後継者でなければ、その価値は薄れてしまうのではないでしょうか。その事業への熱い想いは、経営者の背中を見ながらある程度期間を経て醸成されるものであると考えると、苦楽を共にしてきた従業員への事業承継は想いが引き継がれやすいと考えています。

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【3】地域金融機関のファンド活用

ファンドから投資先企業への経営支援で、顧客との関係強化が実現

事業承継支援ファンドは、ファンドから投資し株式の承継手続きを進めて終わりではありません。後継者のもと事業成長を図るべく、ファンド出資者が連携し伴走者として強力にバックアップしていくメリットは大きなものなのです。
例えば上記のユニックスに対しては、町田社長の新体制で順調に事業成長を成し遂げるために、”新”ユニックスを投資先企業としてモニタリングしながら、大阪信用金庫とFVCでサポートしています。例えば、月次試算表などの財務データを定期的に確認し、数字の変化の裏側にある企業活動の変化・予測を掴み、資金とコンサルテーションがセットとなった経営アドバイスをしていきます。事業承継ファンドが地域金融機関とタイアップしているファンドというのも強みです。必要な資金を早い段階から相談し手を打つことが可能です。また、おおさかファンドを一緒に組成している大阪信用金庫には地域産業振興部という地域内で活動する企業や支援機関と連携してくれる支援部署があります。地域産業振興部の地域に根差した深いネットワークを活用し、研究開発について産学連携を目指し大学をご紹介したり、アライアンス先をご紹介したりと、より具体的なサポートも行っています。

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地域金融機関にとって、ファンドは組織活性化への足掛かり

ユニックスを一緒に支援した大阪信用金庫は、FVCが運営する地方創生ファンドへの出資は、実はこの事業承継を支援するファンドで3本目です。2014年9月に創業支援を目的としたファンドを、2017年9月に社会課題解決を対象とするテーマファンドを、そして2019年9月に事業承継支援を目的とするファンドを設立しています。大阪信用金庫が2014年に創業支援ファンドを設立した背景には、FVCと連携した投資活動を行うことで投資ノウハウを得て、組織内に浸透させ、ソリューション提案能力の向上を図りたいという狙いがありました。当初の創業支援だけでなく、社会課題解決、事業承継支援と多様なテーマでファンドを展開していただいていることで、その効果は明らかでしょう。ファンドを足掛かりに地域企業に対し一歩踏み込んだ支援に尽力していることは、地域産業振興部のスタッフ数が増えていることからもうかがえます。特に、最近は『地域の会社を支援したい』と、自ら手を挙げてくる若手メンバーも増えてきているとのこと。地域の金融機関の機動力が上がれば、地域経済がより活性化するのは間違いありません。地域への熱い思いをもつ金融機関と投資活動でご一緒しながら、目の前にある貸借対照表や損益計算書という数字だけをみるのではなく、未来を見ること、作るためのきっかけのアクションを自分で起こすことをアドバイスする、というのもFVCの役割として重要だと感じています。

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事業承継支援は地域金融機関のビジネスモデルを変革する活路

FVCは、全国の地域金融機関と株式上場を前提としない地方創生ファンドを設立し、地域に根差した中小企業に対し、これまで約240社に資金供給を行ってきました。地方創生ファンドは2011年以降、約10年で30本(2021年1月末時点)に達しています。なぜこれほど地域金融機関が地方創生ファンドを求めているのか、それは、地域金融機関を取り巻く経営環境の変化から自身の変革を求められているためです。
今後ますます本格化する人口減少は、後継者不足などの事業承継問題に直結しています。中小企業は地域ならではの課題に対応したサービスを提供したり、地域の雇用を創出したり、地域経済の根幹です。その中小企業の廃業は、そのまま雇用の喪失につながり、地域の様々な問題が顕在化することにつながります。つまり、地域金融機関が事業承継に取り組む意義は、単に融資機会の獲得に留まらず、地域経済そのものを下支えすることを意味しているのです。
特に事業承継において、地域金融機関は取引先の事業承継に関心はあるものの、経営者のプライバシーや相続問題などが関わってくることから、積極的に踏み込みづらい領域だったのではないでしょうか。しかしながら、繊細な問題であるからこそ、事業承継支援に乗り出し、経営者・後継者の強固な信頼を勝ち取ることは、社会的意義だけではなく、将来利益をもたらす優位性となるでしょう。例えば、事業承継後の事業展開において融資機会を獲得することにつながったり、内部昇格をあきらめM&Aにより営業エリア外の資本傘下になるという顧客喪失の機会を防ぐことができたりするのではないでしょうか。そのことに早期に気づいた地域金融機関が、FVCの事業承継支援ファンドに手を挙げていただいていると感じています。
FVCの地方創生ファンドでは、創業を増やすための創業支援ファンドと、廃業を防ぐための事業承継支援ファンドの2つを展開しています。人口減少という大きな流れに抗い構造改革を地域全体で推し進めていくためには、融資だけに留まらず投資やソリューション提案などを交えたダイナミクスな活動が求められています。今後も、1社でも多くの中小企業の維持・成長を果たすべく、地域とともに進化する地域金融機関と手を取り合い、地方創生ファンドを推進していきたいと思います。

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【コラム1】既存の事業承継策が馴染まない中小企業のための事業承継ファンド

ところで、事業承継を果たす方法には、M&Aからバイアウトファンドの活用まで様々あります。内部昇格を検討された企業も、先に説明した内部昇格の3つの問題により諦め、M&Aなどの活用を検討する企業が増えていますが、思った通りに事が進まず、苦戦されている企業も多く存在します。その理由をいくつかご紹介します。

1)M&A
経営者の高齢化により事業承継問題に直面する事業者が増え、中小企業でのM&A実績は増加しています。とはいえ従来のM&Aコンサルティング等の支援プレイヤーは取引規模に応じた手数料を受領する場合が多いため、必然とある程度の業績の企業がメインの対象となることが多く、この選択肢に合致する中小企業は、そう多くはありません。一方では、売りたい事業者と買いたい事業者をつなげるM&Aマッチングプラットフォームが出てきたことで、手数料をかけずに自ら相手を見つける手段も出てきましたが、M&Aにおける潜在的なリスクや煩雑な手続きを考えると、経営者の不安も負担も小さくありません。

2)バイアウトファンド
企業価値の向上を図り、売却もしくは株式上場により投資回収を図る、いわゆる「バイアウトファンド」では、ファンドが大半の株式を取得し経営権を獲得し、企業価値最大化のためファンドから経営陣を送り込み業務を執行します。旧オーナーや後継者の役割は、新経営陣が行う様々な改革・改善を補佐することになるため、バイアウトファンドでは、「後継者に想いのバトンをつなぐ」ということは難しいこととなります。

日本の中小企業の約85%は小規模事業者ですが、FVCの事業承継支援ファンドは、例えば、売上規模2億円・従業員数10名程度と規模がそれほど大きくない事業者の方でも活用いただける仕組みとなっています。そして、現経営者の背中を見てきた内部人材の方が一歩踏み出せる勇気を持つことができ、「想いのバトンをつなぐ」ことができる仕組みでもあります。
地域で求められる事業者が事業継続をしていけるよう、従来の事業承継支援策が馴染まず選択しがたいと感じていた事業者にこそ、事業承継の新たな手法として活用していただきたいと考えています。

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【コラム2】種類株式投資で後継者の買取資金負担と現経営者(オーナー)の不安を同時に解消

後継者が経営権を確保するには、できれば3分の2以上、最低でも過半数の議決権を確保することが求められます。後継者が社長という立場に就いても、会社の重要事項を決める株主総会における議決権を有していなければ、実質的な経営委譲は進まず、独り立ちは遠のいてしまいます。一方で、それまで一生懸命に会社を守ってきた現経営者(オーナー)の立場としてはどうしても不安から一定の関与を残したいと思ってしまうものです。現経営者(オーナー)が心配するのは、後継者に経営権を渡した場合に、想定外の意思決定をしてしまわないかどうかです。例えば、事業を勝手に売却してしまったり、大切な従業員をリストラしたりしないか、数年後に今の志を忘れてしまわないか、などが挙げられます。
FVCでは、ファンドの活用提案の場で、後継者教育を進める意味でも「経営と所有の一致」を現経営者(オーナー)に理解し受け入れていただくと同時に、現経営者(オーナー)の不安を取り除けるよう種類株式(*)を設計しガバナンスを効かせることを提案しています。
具体例で説明していきましょう。仮に発行済み株式が100とし、現経営者(オーナー)は85株を保有していたと仮定します。現経営者(オーナー)からファンドが普通株式のまま譲り受けてしまっては、ファンドが会社の経営権を有し意思決定をできてしまいます。これを、普通株式を無議決権の種類株式に変更する手続きを経ることで、議決権がある株式は15株となります。後継者はこの15株に対し一定の経営権を確保すればよいのです。議決権を伴う株式の数が減る分、後継者の経営権確保が容易になると同時に、株式買取の負担が軽減されるのです。
では、もうひとつの現経営者(オーナー)の不安、ガバナンスについてはどう解消するのでしょうか?それは、ファンドが保有する種類株式に拒否権を設計することです。無議決権に変更したためすべての議案に対し満遍なく議決権を有することはできませんが、特定の内容には種類株主の決議が必要になるよう条件づけることが可能です。例えば、役員の選任、事業の譲渡や、外部の企業との資本提携などが挙げられます。そうした会社の重要な方向性に係る事項について、我々のファンドが決議に参加することで、より客観的な視野に基づく健全な企業経営が求められることとなり、結果として現経営者(オーナー)にも一定の安心感を持っていただけるのです。

■FVCの地方創生ファンドを活用した事業承継スキーム図

FVCの地方創生ファンドを活用した事業承継スキーム図

*種類株式の内容については、当社代表取締役社長である松本の著書、「地域金融復権のカギ『地方創生ファンド』-共感・感動のスモールビジネスを育て、日本を変える」 第2章 地方創生ファンド運営の流れと仕組みをご覧ください。

しかし、ここまでの説明ではファンド活用は良いことばかりのようで、ファンドが譲り受けた株式がその後どうなるのかが気になるのではないでしょうか。実は種類株式には「取得請求権」という項目があり、ファンドから投資を行う際に、投資先企業の業績が順調に伸びた数年後、その株式を買い戻してもらうように設計しています。数年後に予定される株式の買取り相手は投資先企業になるため後継者の資金的な負担はありません。また、投資先企業が自己株式を買い取るには利益剰余金の積み上げが前提となります。一般的なバイアウトファンドのように企業価値を高めてバイアウトすることが目的ではないので、投資時点で作成いただく事業計画に基づき、無理ない範囲での買戻し可能な設定を行います。つまり、ファンドは現経営者(オーナー)から引継ぎ会社を維持・拡大していこうという後継者と同じ目標を共有し、その目標達成ために経営者に寄り添いながら、様々な経営支援を行うことになるのです。 業績を維持・拡大し、3~5年かけて段階的に(もしくは一括で)ファンドが保有する株式の自社株買いが完了した時に、事業承継手続きにおける後継者としての責務を果たせたこととなるのです。

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【コラム3】投資先企業との関わり方(モニタリング・ガバナンス)

ベンチャーキャピタルの投資先企業への関わりとしては、「モニタリング」と「ガバナンス」があります。
投資した資金が目的通りに使われているか、事業計画に対し事業の進捗がどうなっているかを確認するのが「モニタリング」です。月次試算表などの数値変動から動向を掴んだり、ヒアリングにより状況を把握したりします。
「ガバナンス」においては、牽制機能の役割とメンターとしての役割の2つがあります。FVCの投資担当者が取締役会や経営会議に参加し、数字以外の情報も含め投資先企業の状況を把握したうえで適宜アドバイスをしたり、合理的な検討を促したりと、牽制機能を果たします。ファンドの運営管理上の責任はもちろんですが、中小企業は上場企業と異なり社外取締役や幹部人材を確保しづらいという状況があるため、ファンドのメンバーでそれを補う役割を果たしているのです。また、経営者が意思決定をする前に個別に相談を受けることもあります。経営者は社内では相談しづらい決断もあります。そのような時に、メンターとして話を伺ったり、経営者ネットワークを紹介したりするなど、経営者のモチベーションの維持をサポートします。
FVCでは、モニタリングとガバナンスを実施するため、最低月に1度は投資先企業とコミュニケーションを図ることを基本としています。
なぜモニタリングやガバナンスを行うかというと、「投資先企業の利益が結果的にファンドのリターンにもつながるから」ということもありますが、大前提として、FVCは「地方創生の実現に向け、地域貢献に努めている企業を応援するためにファンドを運営」しています。そしてその想いを同じくする地域金融機関をパートナーとしています。そのため、ファンドから資金を出して終わりではなく、投資した企業が企業成長を果たすこと、ファンドの関わりにより経営体制が強化されることで、ファンドとの関係が終わっても継続的に企業成長を遂げる体制を手に入れ、さらなる地域貢献を果たしてほしいとの思いで伴走しているのです。皆さんが一般的に抱くファンドのイメージよりも、実際には経営者に寄り添った関わりを努めています。

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